
【2017年9月】
相手がどんな人であろうと、もう構わない。
そう思い、心当たりのある方すべてに連絡をしました。
おそらく10名近い人数だったと思います。
『お元気ですか?』
もちろん1度でもお会いした人はおりません。
とにかく、週末を1人で過ごす事を避けられるなら、誰でもいいと思っていました。
返事はほとんどの人から返ってきました。
しかし、話しをしてみると、実際に会えそうな方は4名だけでした。
(ずっと会いたいと言ってきてても、実際に会うとなると、こういうものなのね…。)
『恵子さんに誘われたら、すぐにでも飛んでいきますよ。』

そう言っていた方も、実は住まいが関西だったりと、SNSでの会話がいかに希薄かという事を思い知らされました。
4名の方は首都圏近郊に住んでおり、時間さえ合えば会えると言って頂けました。
そして最終的にお約束をした方は2名となりました。
出来ることなら1人の方と2日間を過ごせればと思ったのですが、そう簡単にはいきませんでした。
過ごすと言っても夜にお食事をして、お酒を飲んで、という内容だけしかしませんでした。
もちろん、これだけで終わるはずもないと思っていましたが、それはもう成り行きに任せるつもりでした。
ただ、それは甘い考えでした。
男性の性なのか、それとも、私がそうさせてしまうのかはわかりません。
食事とお酒を楽しみ、素敵な夜を過ごす、という考えは、一晩たりとも実現はしませんでした。
『明日は美味いタイ料理の店に行きましょう。』
そう言ってくれた方は俊哉さんと言いました。
年齢は40代とだけ教えてくれましたが、それ以上は詮索しませんでした。
待ち合わせはお店の前でした。
私も名前は知っているお店でしたのですぐに合流することが出来ました。
SNSを通じては何度か会話をしていることもあり、挨拶もほどほどにすぐに入店しました。
店内は満席状態でしたが、彼が予約をしてくれていたおかげですんなりと入ることが出来ました。
最初はぎこちない会話でしたが、とても美味しいタイ料理とお酒のせいで、徐々に会話も弾んでいきました。
「けど、どうして急に会ってくれる気になったの?」
「えっ、あっ、ちょっと、ね…。」
「ずっとはぐらかされてたのに…。もしかして、息子さんと喧嘩でもした?」
半分は完全に正解です。
もう半分も似たようなものですが、まさか彼の部屋に行けないからとは言えません。
「喧嘩というか、恋人が来てて…。」
そう黙りこくってしまうと、彼が私の手を取り、こう囁きました。
「こんな綺麗なお母さんをほっとくくらいだから、よほど可愛い彼女なんだね。」
「うん…。」
可愛いのは間違いないですが、やはりいい気はしません。
「あっ、ごめん。けど、理由がわかったよ。俺で良かったら今夜はとことん付き合うからね。」
こう言うと大変失礼ではありますが、俊哉さんは私のタイプではありませんでした。
もし、こんな状況でなければ、長い時間を過ごすことはなかったはずです。
しかし、彼にとっては幸運だったと思います。
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えますね。」
拠り所が無いためか、それともお酒が回ってきたせいかのかはわかりません。
彼の誘いとも言うべき言葉に、私は乗ってしまいました。
その返事に、彼が歓喜したのは言うまでもありません。
「お店も混んでるし、予約時間もあまりないから、そろそろ場所を変えようか?」
あと1時間くらいはお店に居てもいいはずなのはわかっていましたが、それを否定するほど私も子供ではありませんでした。
(そうよね…。こうなるよね…。)
「どこに行こうか?」
そう言って、当てもなく彷徨うふりをしている彼に寄り添って歩いていると、見たことがある風景が広がってきました。
「こういうところに入ったら、怒る?」
冗談っぽく言っている彼でしたが、目は真剣そのものでした。
「ううん…。俊哉さんにお任せします…。」
遅かれ早かれ、こうなることはわかっていました。
それに、もっとお酒を飲んでしまうと私自身、記憶が定かでなくなってしまいます。

そんな状態で初めて会う男性と一夜を共にするのは危険ということを学びました。
(和彦さんのときみたいに、全部話したら大変だから…。)
幸か不幸か、和彦さんは私の素性を知っても、それを使って酷い事をしようとはしません。
ただ、皆が皆そうとは限りません。
翔悟のように、自宅を知られるだけでも、誘いを断ることが出来なくなってしまいます。
そんな私の意図を知らずに、俊哉さんは嬉しそうにラブホテルへ向かいました。
ただ、このときほど酩酊していなかった事を後悔したことはありません。
(あんな恥ずかしいこと、思い出したくないよ…。)
すべては結果論になってしまうので、何が正しかったのはかはわかりません。
しかし、一つ言えることは、見た目で人は判断出来ないということでした。
そしてそれは、何も俊哉さんだけに限ったことではなかったということでした。
「こんなに早い時間からホテルに入って、嫌じゃなかった?」
「大丈夫ですよ。あまりお酒は強くないですから…。」
「そうだったね。」
そう言うと彼が近づき、そっと私を抱き締めました。
「今夜は恵子さんの寂しさを全部忘れさせてあげるよ。」

そっと口づけをされたとき、不覚にも私は思ってしまいました。
(良い人に出会えて良かった…。)
それが完全な勘違いであるということは、夜が深まるたびにはっきりしていきました。
息子や夫になかなか話せなかった一夜は、こうして静かに幕を開けました。
コメント
こんにちわ
最近のお話は
「母と息子」というより「寝取り寝取られ」ですね
時の流れでしょうがないかな
淫乱なとこは変わらずって感じですが
息子さんも結婚されたので変わっていくのでしょうね
ちょっと寂しいですけど
これからを楽しみにしています。
ご意見ありがとうございます。
最近だけを断片的に読まれるとそう見えるかもしれませんね。