子供たちの食事も終わり、そろそろお風呂に入れようとしていたときでした。
「ただいま!」
息子の部屋に行っていたはずの美沙ちゃんが帰ってきました。
「えっ、どうして?」
明日は土曜日なので、きっと朝まで一緒だと思っていました。
「恵ちゃん、これからお風呂?」
「うん、そうだけど…。何かあったの?」
「ゆう君が呼んでるよ。すぐに来てくれって。」
「!?」
最初はよく意味がわかりませんでした。
「恵ちゃんにすぐ来るようにって言われたから帰ったきたんだよ。」
(えっ、なんで…。いまさら、何言ってるのよ…。)
正直言って、もう息子の部屋に行きたいという気持ちは無くなっていました。

原因は、息子が一番良く知っているはずでした。
「行かない。これからお風呂だからって、美沙ちゃんからゆうちゃん伝えて…。」
「やっぱりそう言うと思った。恵ちゃん、これ見て。」
彼女の差し出したのはスマートフォンでした。
そこには息子のメッセージが書かれていました。
『母さんはきっと来ないって言うだろうね。それは母さんの好きにしたらいいよ。けど、もし本当に来なかったら、俺と母さんはもう終わりだよ。普通の親子でいいなら、来なくていいよ。』
「こんなのズルいよ…。」
美沙ちゃんに言ったわけではありませんが、つい声が出てしまいました。
「恵ちゃんが怒るのはわかるよ。けど、今日は行った方がいいよ。」
「けど…。」
「あたしを信用して。」
たぶん、家族の中で、一番頭の上がらないのは彼女に対してです。
結局、身なりを整えて、息子の待つマンションに向かいました。

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